
満天の星空の下に生まれる命
― ハナハナの浜辺で出会ったウミガメの産卵 ―
2026.08.06
ハナハナの浜辺でウミガメの産卵に立ち会いました

先日、ハナハナビーチリゾートの砂浜でウミガメが産卵する貴重な瞬間に立ち会うことができました。
満天の星空の下、静かな波音だけが響く夜の浜辺。大きなウミガメがゆっくりと砂浜を進み、命をつなぐための営みを始めました。
ウミガメは一生のほとんどを海で過ごし、陸に上がってくるのは産卵の時期だけ、しかも産卵するのは夜なので、全国的にみても、ウミガメを観察できるのは珍しいことです。
これまでにも何度か上陸跡は確認していましたが、実際に産卵している姿に立ち会えたのは今回が初めてです。慎重に距離を保ちながら、その貴重な営みを見守り、撮影することができました。
大きな体でゆっくりと砂浜を進み、前足で砂をかき分けながら巣穴を掘る姿は、とても力強く、それでいて神秘的でした。
産卵を終えると、再び海へ向かい、静かに暗い海の中へと消えていきました。
私たちが暮らすこの場所で、今もなお自然の営みが続いていることを実感する、とても特別な出来事でした。
奄美の海を旅するウミガメ
ウミガメは世界に7種が確認されており、そのうち日本近海ではアオウミガメ、アカウミガメ、タイマイ、オサガメ、ヒメウミガメの5種が確認されています。その全てが日本の法律や条例、国際条約等で保護されています。
日本で産卵が確認されているのはアオウミガメ、アカウミガメ、タイマイの3種。そのうち奄美群島には主にアオウミガメとアカウミガメが産卵のためにやってきます。
今回ハナハナで確認された個体は、足跡や上陸痕の特徴からアオウミガメである可能性が高いと思われます。
アオウミガメはウミガメの仲間の中では珍しく、主に海草や海藻を食べて育つ草食性の種です。
そのため、海草藻場の健全な環境はアオウミガメの生息に欠かせず、その存在は豊かな海の生態系を示す指標のひとつともいえます。
成長すると甲羅の長さは1メートルを超え、体重が100kg以上になることもあります。
奄美群島での産卵ピークは6月から7月です。
海の中ではゆったりと泳ぐ姿が印象的ですが、その一生は驚くほど壮大です。
ふ化した子ガメは外洋へ旅立ち、広大な海を回遊しながら長い年月をかけて成長します。
そして約30年の時を経て成熟したメスは、生まれた地域の海岸へ戻り、新たな命を産み残すと考えられています。
一度の産卵で100個前後の卵を産むといわれていますが、そのすべてが成長できるわけではありません。
卵や子ガメの時期には多くの天敵や自然環境の影響を受け、奄美大島ではイノシシによる卵の捕食も確認されています。
数多くの困難を乗り越え、大人になることができるのはほんのわずかです。
だからこそ、産卵場所となる海岸環境を守ることは、ウミガメたちの未来を守ることにもつながるのです。

なぜハナハナの浜を選んだのでしょうか
ウミガメが産卵する海岸にはいくつかの共通点があります。
まず、十分な砂浜があること。
そして、人の往来や人工的な光が少なく、また、脅威となるイノシシに狙われずに安心して上陸できる環境であることです。
産卵のために浜へ上がってくるメスガメは、とても慎重です。
周囲が明るすぎたり、人の気配が多かったりすると、産卵をあきらめて海へ戻ってしまうこともあります。
ハナハナの浜辺は、奄美らしい自然海岸の景観が残されており、夜になると波の音が静かに響く環境です。
こうした条件が整っていたからこそ、この場所が産卵地として選ばれたのかもしれません。
もちろん、ウミガメに理由を聞くことはできませんが、今回確認されたウミガメも、夜間の静かな環境のなかで慎重に産卵場所を選び、時間をかけて産卵を行っていました。
産卵中は非常にデリケートな状態であるため、十分な距離を保ちながら観察と撮影を行いましたが、命をつなぐための懸命な姿に、改めて自然への敬意を感じました。
この浜辺が彼らにとって安心できる場所だったことだけは確かだと思います。

ウミガメが減少する原因
砂の流失・護岸工事など産卵の適した場所の減少や、プラスチックなどの漂流している人工物を誤って食べてしまうなどの被害があります。
また、近年世界各地で問題となっているのが「光害」です。
ウミガメは月明かりや海面の反射光を頼りに行動するといわれています。
そのため、海岸周辺に強い照明や街灯が増えると、ふ化した子ガメが海とは反対方向へ進んでしまうことがあります。
また、産卵に訪れた親ガメも人工光によって上陸をやめる場合があり、大きな影響を与えることがあるのです。
大和村国直集落では、ウミガメの産卵・ふ化の時期に海沿いの街頭に赤色のカバーを設置し、上陸したウミガメに刺激を与えないようにして、子ガメの迷走も防ぐ取り組みを行っています。
ハナハナでは、貴重な自然環境と共生する施設として、海岸環境への配慮を今後も大切にしていきたいと考えています。

世界自然遺産の島に生まれた命
奄美大島は2021年に世界自然遺産に登録されました。
その理由のひとつは、多くの固有種や希少な生きものたちが暮らしていることです。
アマミノクロウサギやルリカケスがよく知られていますが、豊かな海にもまた、多くの命が息づいています。
サンゴ礁、海草藻場、魚たち、そしてウミガメ。
これらは互いに関わり合いながら、奄美の豊かな自然を支えています。
今回確認された産卵も、世界自然遺産の島ならではの自然の豊かさを感じさせてくれる出来事でした。
ハナハナがあるこの海岸もまた、その貴重な自然環境の一部です。
ハナハナが取り組む「自然との共生」
今回撮影できた産卵の様子は、自然が私たちに見せてくれたかけがえのない贈り物でした。
この砂浜で生まれる子ガメたちは、数か月後に海へ旅立ちます。
そして長い年月をかけて成長し、その一部が再び奄美の海へ帰ってくるかもしれません。
その日まで、この浜辺が安心して命をつなげる場所であり続けられるよう、ハナハナはこれからも自然と共生する取り組みを続けてまいります。
